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by honeyrecords

多田由美についての考察

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 多田由美のマンガはアメリカの香りと、不安定な人間と、優しさ、痛さ、美しさのぎゅっと濃縮された異次元世界。

 厳選された少ない線と、音のならない(そう、多田マンガにオノマトペは存在しないのです)静かな空間、説明のない台詞回し、映画のようなカット割りがいつもいつでも私を魅了するのです。

 華奢で繊細な少年、グラマラスでセクシーな女性、頼りなくて可愛げのある中年男、いつも怯えていて切ない表情をする子ども達。全員しゃくれているという噂もチラホラなのですが、最近画風がちょっと変化して線に丸みが加わり、美しさに磨きがかかりました。

 描かれる物語のテーマはいつもほぼ同じ。出てくる人間関係はほぼ同じ。二人の少年の友達以上恋人未満、総じて恋人以上の友人関係が描かれている。片方の少年にとってもう片方の少年は神として君臨している。(多分それをラブと言うのだ)その二人に起きる事件が変わっていくだけで、描かれるテーマは不変で不動である。
 本人もこのように書いている
「いつも同じテーマを書いている。でも、読者はともかく、私はぜんぜん飽きていない。
 登場人物の精神的欠陥は、即ち私自身のものである。潔癖で、暴力的で、セックスレスで、マザコンで、嘘つきで、自己中心的で、オタクで、それから……。」

 彼女は天才だと私は確信している。彼女のマンガにはゴッホやエゴンシーレやクリムトと同じ香りが漂っている。切ない優しい狂気という名の凶器。
彼女の心の柔らかさは本人のホームページの日記からもわかる。彼女は多分に正直者で、多分に強迫観念に駆られており、いつでも自分を理解してくれる人を求めている。彼女の日記は痛くて美しい。作品もしかり。

 登場人物にはどこかで見たことのある人も沢山出ている。アクセル・ローズよりも美しいアクセル・ローズ、ジョニー・ウィンターよりも美しいジョニー・ウィンター、セバスチャン・バックよりも美しいセバスチャン・バック、他にも80~90’Sアメリカンロックファンにはたまらない人が登場。ロックファンには絵を見るだけでも楽しめる。

 カラーページの美しさも抜群。マンガ家の画集を買うなんて無意味だと思っていたくせに、多田由美画集を取り寄せで購入しちゃったよ…。でも画集を買わなくったって、本人のホームページで沢山のイラストが発表されているので一度ご確認を。

 最後に「ストップ!ひばりくん」他、多数の名作を持つ、原稿を落とすことで有名な御大江口寿史大先生の名キャッチコピーで閉めさせていただくことにいたしますぞえ。

「タランティーノだウォン・カーワァイだのと言う前に日本の多田由美を読みなさい!」

名言であります。
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by honeyrecords | 2004-10-21 20:04 | ロックな漫画